discarding the frame : mark tansey

マーク・タンセイ (mark tansey) という画家の作品を取り上げてみたいと思う。1949年生まれのアメリカ人アーティストである。google などで検索してみるとお判りになると思うが彼の作品の一番の特徴はモノクロ写真の様な作風だ。一瞬デッサン用チョークかなにかで描かれているようにも見えるが殆どの彼の作品は油絵である。
 
その中でも ”discarding the frame” という絵を私は大変気に入っている。初めてお目にかかったのはまだ学生だった頃、通称「ボストン美術館」と呼ばれる museum of fine arts, bostonでアートのクラスがあった時にたまたま見掛けたのがきっかけでそれ以来展示が終わるまで何度も通い詰めた記憶がある。
 

 
実際の絵はかなり大きいものでモノクロながら少し緑青がかったトーンが異様な冷たさを醸し出している。洞窟のなかに落ちていく滝、その滝の上に二人の人間がいて背後から日が射している。そして二人は絵画用の大きな額縁をエイヤ!っとばかりその洞窟の中に投げ込んでいる構図だ。
  
額縁を投げ込むというのは象徴的だ。既成の概念、枠組みをこのアーティスト(と勝手に私が思っている)の二人は自信をもって捨て去ろうとしている。背後の日光はその自信の表れだろう。その枠組みから脱却しようとする姿勢、なんとか既成のものを破壊しようとする勇気は音楽を生業とする私にとっても非常によくわかる心情だ。またもしかしたらこの枠組みは社会一般のことかもしれない。世の中の通念をぶち壊してより「個」になろうとするアーティストの本能みたいなものを示しているのかもしれない。ところがところが… 本人達は大自信をもって捨て去ったつもりの額縁の陰の中に自分たちが投影されてしまい、結局その枠組みから逃れられないでいる。その投影の原因が自らの自信なのだ。
 
実際ご本人がどんなコンセプトでこの作品を描いているかは知る由もない。しかし音楽の勉強中だった自分にはこの絵から導き出される芸術に対する解釈は実に衝撃的だった。本人は何万キロも飛んだつもりだったのにお釈迦様の指と指の間だった、みたいな孫悟空の気分である。

決して有名でもない mark tansey とその作品だが、私はこの絵の出会えて幸せだなと思える。自分を見失った時に recover するための小道具の1つとして今でも愛用している個人的名画の1つである。
 
-over-
 
次回は甘いネタ

広告

~ by hiroism : 2008年 6月09日 (月).

コメント / トラックバック7件 to “discarding the frame : mark tansey”

  1. 17,8世紀くらいのヨーロッパのお話の一場面みたいに見えますが、随分 最近の絵なんですね。ポッカーーんとずっと眺めていたら落ち着く気がします。本物を見てみたい。。

  2. 初めて見る絵ですが、とても衝撃を受けました。
    私の人生をも象徴しているように見えました。
    古い商家に生まれたと言うだけで無意識のうちにいろんなことに縛られていたように思います。
    打ち破りたい思いがあってもなかなか勇気がない。
    時々はみ出しを試みては見るものの結局その枠の中に納まった人生を送っている。
    それが幸いであったか不幸であったか今尚判りません。
    来週約250年続いたその家も区画整理で取り壊されます。
    余りにも文化を蔑ろにした行政に今更ながら腹立ちをおぼえます。

  3. dear shachihoko
    もちろん本物は圧倒的です。今どこにあるのかちょっと調べがつかないのですが…無名な画家なので日本での観賞はまず難しいでしょう。残念です。

    dear はらはら
    芸術に限らず人は様々はことに囚われてますね。開放されたりされたようで実はもっと大きなものに囚われていたり。そんなことを思わせる絵です。
    しかし、今から250年前といえば9代将軍のことじゃないですか!まさか250年前なんて古いうちに入らないという訳ではないでしょうが残念な話です。それも来週…この目で見る事は叶いませんがいつか是非写真ででも観賞させてください。

  4. そうなんです。
    いま大河ドラマで”篤姫”やってますが、その頃には実家があったということになりますね。
    来週は離れ屋と蔵が取り壊されます。
    母屋は少し遅れて何ヶ月か後になるそうです。
    実に残念です。
    移築するには莫大な費用がかかること、それを行政では出来ないと言われました。
    あちこちに当たってはみたけれど、どうすることも出来ず、
    資料として大学の先生が残して下さったことと、資料館に物品少しが残ります。
    せめてもの慰めです。

  5. dear はらはら
    そういうことにこそ税金を使ってもらいたいですね。壊すのは簡単だけど壊したらもうおしまいですからね。残念です。

  6. 他の作品も見てみました。
    この絵にはどういう意味があるのだろうか…
    とあれこれ考えながら見るとかなり面白いですね。
    あまり絵を見る機会が無いのでいつか絵画展などに行きたいです。

  7. dear Carrie
    そういう見かたをしていくとアートも奥が深いですよね。目線の移動とかいろいろ考えて描いていますからね。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

 
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。